第3回 乳がん検診の勧め - 山下 毅 -
乳がん検診の勧め
1980年代に欧米で乳がん検診の有効性を見た大規模臨床試験が行われ、マンモグラフィの有用性が証明されました。それによって欧米では、マンモグラフィ検診の受診率が70〜80%と高く、また以前に広く流行っていたホルモン補充療法の中止勧告(乳がん発症率をわずかであるが増加させる可能性があるため)もあり、乳がん死亡率が低下してきています。
そのデータを根拠にして日本は遅れる事20年余、ようやく2004年から、老人保健事業における指針で2年に1回の40歳以上マンモグラフィ・視触診併用検診が導入されたところでありますが、未だ乳がん死亡は増加中です。
その原因として考えられる事は、日本でも最近は精度管理・標準化も進んできましたが、まだまだマンモグラフィ検診の受診率が20〜30%程度しかないことがあげられます。また、欧米では高齢者に発症が多いのに比べ、日本では40歳代に乳がんを発症することが多い事がわかっており、若い人では高濃度乳腺(乳腺組織の量が多く密度が高いこと)が多く、マンモグラフィの精度が高濃度乳腺で低いことも乳がん死亡が多い原因となっているものと考えられます。
その原因として考えられる事は、日本でも最近は精度管理・標準化も進んできましたが、まだまだマンモグラフィ検診の受診率が20〜30%程度しかないことがあげられます。また、欧米では高齢者に発症が多いのに比べ、日本では40歳代に乳がんを発症することが多い事がわかっており、若い人では高濃度乳腺(乳腺組織の量が多く密度が高いこと)が多く、マンモグラフィの精度が高濃度乳腺で低いことも乳がん死亡が多い原因となっているものと考えられます。
そこで高濃度乳腺に強い超音波による検診が日本でもさかんに行われるようになってきました。しかしマンモグラフィのように全体をフィルムに収めるのではないため、再現性に乏しいことや技師の技量に左右されることもありなかなか標準化されていませんでした。ようやく2008年になり「乳房超音波診断ガイドライン改定第2版」が作成され、診断精度も向上してきているところです。
そして、第3次対がん総合戦略研究事業 乳がん検診における超音波検査の有効性を検証するための比較試験J-Startが、日本において十万人規模で始まり、すでに6万人以上が登録されています。しかしその結果が出て、超音波検診が本当に有用であるかどうかわかるのは、まだ10年以上先になります。このため現段階で最も検診として適切と思われる画像診断はマンモグラフィであると言えるでしょう。
そして、第3次対がん総合戦略研究事業 乳がん検診における超音波検査の有効性を検証するための比較試験J-Startが、日本において十万人規模で始まり、すでに6万人以上が登録されています。しかしその結果が出て、超音波検診が本当に有用であるかどうかわかるのは、まだ10年以上先になります。このため現段階で最も検診として適切と思われる画像診断はマンモグラフィであると言えるでしょう。
視触診は、単独では死亡率低減効果がないという相応の根拠があると報告されています。そして感度はマンモグラフィや超音波の80%以上に比べ、60%程度だと考えられています(表1)。
表1 乳がん検診における各検査法の利点と欠点
視触診
利点 | 欠点 | 感度 |
---|---|---|
腫瘍をみつけることができる | 担当医の技量に左右される | 60%程度 |
乳房や乳頭の形(陥凹など)の異常がわかる | 客観的ではない | |
乳頭分泌を確認できる | 腫瘤のある程度の大きさでないとわからない | |
身体に負担をかけない | 単独では死亡率低減効果がないとするEBMあり |
マンモグラフィ
利点 | 欠点 | 感度 |
---|---|---|
がんに特徴的な微細な石灰化病変を検出する | 若い人に多い高濃度乳房では腫瘍がみつけにくい | 80%程度 |
ミリ単位の病変検出可能 | 被爆がある | |
線維腺腫などの良性病変を検出できる | 検査に痛みを伴う場合がある | |
精度管理が確立されている | ブラインドエリアが存在する | |
欧米で確立された唯一のEBMである |
超音波
利点 | 欠点 | 感度 |
---|---|---|
若い人に多い高濃度乳房の腫瘍を検出しやすい | 担当技師の技量に左右される | 80%程度 |
ノウ胞などの良性病変を検出できる | 記録性・再現性に問題あり標準化が遅れている | |
被爆・痛みがない | 疑陽性症例が多くなる傾向がある | |
死亡率減少効果のEBMは未だ示されていない |
※EBM:根拠に基づいた医療
しかし他の検査と併用する事でその有用性がある事が考えられます。マンモグラフィでは苦手な高濃度乳腺の表面にある小さな腫瘤が触診で見つかる事や、皮膚陥凹や乳頭の形の異常などが見られることもあります。乳頭分泌の状態(特に血性)を確認することもできます。また、マンモグラフィにはブラインドエリア(1方向では内側上部が映りにくい)があるのですが、逆にここは乳腺の薄い部分であるため触診でわかりやすいのです。
自己触診に関しては、米国の新指針では「良性疾患の発見は増えるが死亡率低減効果はないので奨励しない」とされているのですが、検診受診率が少なく検診間隔を2年としている日本の現状では、触診しながら自己触診の方法を指導することによって、乳がんに関する関心を持ってもらう事につながり、検診受診の継続や受診率アップにつながり、ひいては死亡率低減に効果があるのではないかと考えております。
当健診センターでは、触診とマンモグラフィの検診を実施しています
平成22年の集計(表2)では、当センターで生活習慣病健診を受けられた、全女性の約半数の4,450名が乳がん検診(触診のみ またはマンモグラフィ併用)を受けられました。そのうちマンモグラフィを受けられた方は2,630名で、要精密検査と判定された方は134名(5%)、その中からわかっているだけで9名(0.34%)の方が乳がんでした。(他の医療機関に精密検査に行かれた場合は最終診断が把握できていないことがあります)
項目セットでマンモグラフィを実施された1,624名とオプションでマンモグラフィを実施された1,006名で分けた時も、各々6人と3人のがんが見つかり、がん発見率は、いずれも0.3%と同じくらいの比率で発見されています。ちなみに、マンモグラフィを受けずに触診のみの検査でも4名(0.22%)乳がんが見つかっております。
項目セットでマンモグラフィを実施された1,624名とオプションでマンモグラフィを実施された1,006名で分けた時も、各々6人と3人のがんが見つかり、がん発見率は、いずれも0.3%と同じくらいの比率で発見されています。ちなみに、マンモグラフィを受けずに触診のみの検査でも4名(0.22%)乳がんが見つかっております。
当センターではマンモグラフィは、主に女性のレントゲン技師が担当しております。また触診では、できるだけ自己触診のポイントなどもお話ししながら行っております。マンモグラフィ実施時に痛みを感じる方もおられますが、早期発見・早期治療に結びつけるためにも、是非積極的にマンモグラフィと触診の併用による乳がん検診を受けましょう。
表2 三越総合健診センターにおける平成22年乳がん発見率
受診者数 | 要精検者数 | (%) | 乳がん | (%) | |
---|---|---|---|---|---|
全女性 | 9,033 | ||||
全乳がん検診(触診かつ/またはMMG) | 4,450 | 13 | 0.29% | ||
触診+MMG(op含む) | 2,630 | 134 | 5% | 9 | 0.34% |
触診+MMG | 1,624 | 75 | 5% | 6 | 0.37% |
オプションでMMG | 1,006 | 59 | 6% | 3 | 0.30% |
触診のみ(op含む) | 1,820 | 4 | 0.22% |
MMG:マンモグラフィ、op:オプション